|
●不妊治療をこの1年間167名に行い95名(症例別妊娠率56.9%)が妊娠に至りました。(図1)
平成27年1月から平成27年12月までの1年間に妊娠を希望して当院に来院された方は262名。 診療が1周期のみの44名(内訳は治療が1周期のみの33名やカウンセリング、血液検査や精液検査のみの11名)を含む治療周期が2周期までで経過の判らない方69名を除いた193名を解析対象としました。
193名から男性因子16名(無精子症2名、総運動精子数が500万未満の乏精子症10名、運動率が5%未満の精子無力症4名、)、FSHが15以上の閉経および卵巣予備能が著しく低下している5名、両側卵管閉鎖1名、乳がん1名、親の介護1名、プロラクチン産生下垂体腫瘍1名、視床下部性無月経で卵巣刺激注射(ゴナドトロピン治療)を希望しなかった1名の計26名を除いた167名のうち、妊娠に至った方は95名(症例別妊娠率56.9%)でした。
生殖補助医療である体外受精・胚移植を行った5名を除くと、一般不妊治療では162名中93名(症例別妊娠率57.4%)が妊娠に至りました。体外受精・胚移植では5名中2名、内訳は新鮮胚移植3名中1名、凍結胚の融解胚移植3名中1名が妊娠に至りました。
●開院以来14年10ヶ月でのべ1,249名が妊娠に至っています。(図1)
平成14年3月に開院以来、平成27年12月までの13年10ヶ月で、妊娠した方は平成14年度50名、15年度57名、16年度79名、17年度101名、18年度80名、平成19年4月から12月末までの70名、平成20年の118名、21年の92名、22年の106名、23年の106名、24年の92名、25年の102名、26年の101名、27年の95名を加えて、のべ1,249名となりました。
|
|
◆治療法別の妊娠は、妊娠に至った95名中、タイミング療法で29名(30.5%)、排卵誘発剤等投与で64名(67.4%)、体外受精胚移植は2名(2.1%)でした。
なお、排卵誘発剤別では経口投与が42名、卵巣刺激注射が22名でした。(図2)
◆症例別の妊娠はタイミング療法63名中29名(46.0%)、排卵誘発剤投与134名中64名(47.8%)で、排卵誘発剤別では経口投与95名中42名(44.2%)、卵巣刺激注射は43名中22名(51.2%)でした。
|
表1
治療法 |
症例 |
妊娠 |
妊娠率 |
流産 |
流産率 |
多胎 |
タイミング |
63 |
29 |
46.0 |
6 |
20.7 |
0 |
排卵誘発剤(経口) |
95 |
42 |
44.2 |
7 |
16.7 |
2 |
hMG or FSH |
43 |
22 |
51.2 |
4 |
18.2 |
0 |
小計 |
162 |
93 |
57.4 |
17 |
18.3 |
2 |
体外受精 |
新鮮胚 |
3 |
1 |
33..3 |
1 |
|
|
融解胚
|
3 |
1 |
33..3 |
1 |
|
|
小計 |
5 |
2 |
40.0 |
2 |
|
|
|
総計 |
167 |
95 |
56.9 |
19 |
20.0 |
2 |
|
IUI |
症例 |
妊娠 |
妊娠率 |
流産 |
流産率 |
多胎 |
経口剤 |
症例別 |
23 |
5 |
21.7 |
1 |
20.0 |
1 |
|
周期別 |
41 |
5 |
12.2 |
|
|
|
注射剤 |
症例別 |
33 |
16 |
47.1 |
2 |
12.5 |
0 |
|
周期別 |
77 |
16 |
20.8 |
2 |
3 |
|
|
総計 |
症例別 |
45 |
21 |
46.7 |
3 |
14.3 |
1 |
周期別 |
118 |
21 |
17.8 |
3 |
|
|
|
※同年内において複数の治療を受けた方がおられるので、
個々の治療法別の症例数の合計が、小計を超えることがあります。 |
|
●タイミング療法だけで63名中29名(症例別妊娠率46.0%)が妊娠。(表1)
超音波検査による卵胞径、子宮内膜厚の測定、子宮頚管粘液性状の確認、尿のLH検査等によるタイミング療法や指導のみで63名中29名(症例別妊娠率46.0%)が妊娠に至りました。
●排卵誘発剤等経口投与で95名中42名(症例別妊娠率44.2%)が妊娠。(表1)
排卵障害や黄体機能不全の方、タイミング療法のみでは妊娠に至らなかった方々に対し、
経口の排卵誘発剤であるクロミフェン(商品名クロミッド)やシクロフェニール(同セキソビット)、高プロラクチン血症に対しカベルゴリン(同カバサール)、また多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対しインスリン抵抗性改善薬であるメトフォルミン(同グリコラン)等が併用投与され、95名349周期中42名(症例別妊娠率44.2%、周期別妊娠率12.0%)が妊娠しました。
●卵巣刺激注射で43名中22名(症例別妊娠率51.2%)が妊娠。(表1)
排卵誘発剤等経口投与でも排卵に至らなかったり、妊娠に至らなかった方々にHMGやFSHなどの卵巣刺激注射が43名161周期に行なわれ22名(症例別妊娠率51.2%、周期別妊娠率13.7%)が妊娠に至りました。
●体外受精胚移植は3名に新鮮胚移植を3周期行い1名が妊娠に至りました。また3名に凍結融解胚盤胞移植を4周期行い1名が妊娠に至りました。
X.多胎妊娠は2名。 (表1)
多胎妊娠は2名(95名中2名2.1%)で1名が品胎、1名が双胎でした。2名とも経口排卵誘発剤服用であり、品胎はPCO症例に対しクロミッド処方1周期目の妊娠でした。
Y.夫婦間人工授精(IUI)を45名118周期に行い21名(症例別妊娠率46.7%、周期別妊娠率17.8%)が妊娠。(表1)
IUI(intrauterine insemination with husband’s semen 夫婦間人工授精)を45名118周期に行い21名(症例別妊娠率46.7%、周期別妊娠率は17.8%)が妊娠に至りました。
原因不明不妊でのIUIの周期ごとの妊娠率は自然周期3.8%、クロミッド周期8.3%、卵巣刺激注射周期17.1%とのデータがありますので、当院ではIUIに対し、クロミッドもしくは卵巣刺激注射を併用しており、排卵誘発剤等経口投与IUIは23名41周期に行い、5名(症例別妊娠率21.7%、周期別妊娠率12.2%)が妊娠に至り、双胎妊娠は1例でした。
卵巣刺激注射IUIは34名77周期に行い16名(症例別妊娠率47.1%、周期別妊娠率20.8%)が妊娠に至りましたが、双胎妊娠はありませんでした。
Z.流産は95名中19名(流産率20.0%)(表1)
妊娠された95名のうち19名(流産率20.0%)が流産に終わりましたが、子宮外妊娠は1名でした。
治療法別では、タイミング療法では29名中6名(流産率20.7%)、排卵誘発剤等経口投与で42名中7名(流産率16.7%)、卵巣刺激注射で22名中4名(流産率18.2%)が流産に終わりました。
またIUI妊娠21名中3名(流産率14.8%)が流産に終わりましたが、経口排卵誘発剤は5名中1名(20.0%)、卵巣刺激注射でも16名中2名(12.5%)が流産となりました。
体外受精・胚移植での妊娠例は2名とも心拍動を確認できましたが、その後に2名とも流産に終わりました。
[.卵管疎通性検査後、半年以内に102名中31名(妊娠率30.4%)が妊娠。
通気テストや子宮卵管造影検査(HSG)、腹腔鏡などの卵管疎通性検査を26年1月から27年12月までに134名に行いましたが、両側卵管閉鎖1名、閉経を含む卵巣予備能が著しく低下していると推測される3名、男性因子6名、通気テストのみを施行した1名、乳がん1名、介護1名、視床下部性無月経1名の計14名を除いた120名で、検査後半年以内に31名(25.8%)が妊娠に至りましたが、統計処理時に疎通性検査終了後6か月以上経過していない18名を除くと102名中31名(30.4%)が半年以内に妊娠しましたのでので、一般不妊治療における卵管疎通性検査の重要性が再認識されました。
|
|