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大阪府吹田市の不妊治療専門クリニックです.。

治療成績topics


不妊治療を継続することの大切さと難しさ

妊娠を希望し少し敷居の高い不妊治療を始めてみたものの、月に1回しかないチャンスに向けて薬を飲んだり注射をしたり卵胞モニターをしたりしてタイミングを計り毎月頑張っても生理が来ては落胆し、周囲の眼や友人・知人の懐妊のうわさを聞けば心乱れ、自分の頑張りが空回りしている気さえします。不妊治療を経験した方は皆さんこんな気持ちを抱かれたことがおありだと思います。
ゴールが見えないマラソンは、時として息切れしリタイアしたくなります。
1年間の不妊治療の統計を毎年取っていると、多くの喜びの一方で、他方、リタイアした方達も少なからずあり、そういう方達の原因について少し考察したいと思います。

一般不妊治療での妊娠率は半年以内に19%、1年で30%、1年半で36%、2年で43%と報告され、妊娠には治療の継続が必要なことは言うまでもありません。
一方、卵管疎通性障害にはFT(卵管鏡下卵管形成術)やART(生殖補助医療), 男性因子や卵巣機能低下例にはAIH(夫婦間人工授精)やARTと早期のstep upが必要ですが、
原因不明不妊でもAIHの際の妊娠率が、自然周期では3.8%、経口排卵誘発剤であるクロミフェン(商品名クロミッド)周期では8.3%、卵巣刺激注射であるHMG周期では17.1%とのデータがあり、step upも重要です。
そこで当院では、ホルモン検査や卵管疎通性検査(通気・通水テストや子宮卵管造影)、フーナーテスト(性交後試験)、精液検査を進めながら、まず卵胞モニター、LHテスト(排卵日検査薬)によるタイミング療法を3周期行い、妊娠に至らなかった方や元々、排卵障害のあった方には、経口排卵誘発剤であるシクロフェニール(商品名セキソビット)やクロミフェン併用での卵胞モニター、LHテストによるタイミング療法にstep upし3周期行っています。
それでも妊娠に至らなかったり、クロミフェンでは充分な卵胞の発育が見られなかった方には卵巣刺激注射(HMGやFSH)にさらにstep up し3周期施行。それでも妊娠に至らなければ、卵巣刺激注射に加えてAIHをさらに5から6周期併用するstep up 療法を行っています。
その結果、ここ3年間だけでも平成29年173例中108例(妊娠率62.4%)、30年173例中102例(59.0%)、31年から令和1年188例中105例(55.9%)が妊娠に至っており、治療の継続とstep upの重要性を再認識しています。
しかし、妊娠という成果が得られないまま途中でdrop out される方も毎年少なからずおられます。
今回、平成31年から令和1年の1年間についてdrop out された方々についての検討をしてみました。

1. タイミング療法を3周期以上施行後drop out され、経過がわからない方は2名おられ、2名とも経産婦でした。

2. 経口排卵誘発剤にstep upしながら途中でdrop outされた方は36名ですが、1または2周期しか排卵誘発剤を服用しなかった方が18名おられました。
3周期以上施行した方は18名、そのうち8名が経産婦で、残り10名に関しては、
 @  卵巣の問題。 卵巣腫瘍が発見されたり、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や卵巣予備能の低下による排卵障害。
 A  男性側の問題。 検査や治療への夫の協力が得られない。
 B  子宮内腔の問題。子宮内膜ポリープ等。
が7名ありましたが、残り3名はdrop outの理由は不明でした。

3. 経口排卵誘発剤後、卵巣刺激注射にstep up された方は現在も、治療中の方が大半ですが、途中でdrop out された方が8名おられました。
2名は1周期のみで、以後来院されず。残り6名の内訳は4名が経産婦で、2名は卵巣刺激注射でも成熟卵胞が得られず、ARTをお勧めしていた方々でした。

以上からタイミングのみや経口排卵誘発剤併用、卵巣刺激注射併用、それぞれのstep においてdrop out された方には、既にお子様のおられる経産婦が多く、お子様を抱えての通院の大変さや治療のしんどさからdrop out の選択をされたのも無理からぬことかと推察しました。
しかし、全般的にはご夫婦で根気強く治療の継続とstep upにより、約6割の方々が妊娠というゴールに到達されていますが、経口排卵誘発剤にstep up後も、3周期未満で中断されたり、卵巣刺激注射へstep up されなかった方が36名もおられます。
また、カウンセリングや血液検査だけを受けられ、その後一度も受診されなかった方、11名に加えてタイミング療法が1周期のみの方33名、2周期のみの方15名の合計59名もの方が当院での治療を3周期未満で中断しておられました。
最初にも申しましたが、当院では極力身体にもそして費用面でも負担の少ない治療から開始しますので、月に1回しかないチャンスにまずタイミング療法から始めることのじれったさを感じられる方も多いと思います。
しかし、今までの自己流ではタイミングが意外とずれていたり、卵胞モニターやLHテストによりタイミングを上手く取るだけで妊娠につながることも数多く経験しております。
しかし、その後の不妊療法といえば薬を飲んだり注射を沢山打つというイメージを抱きがちですが、これも毎月のチャンスを出来るだけ良好な状態で迎えるための手段と考え、こつこつと続けながら、ゆっくりstep upしていただけるような情報の提供や患者様の心情に寄り添いながらモチベーションを維持して頂ける工夫の必要性を感じております。